痛み止めを飲んではいけません

頭痛、腰痛、膝痛などが起きる理由

腰痛は中高年の患者が圧倒的に多く、筋肉量が減ってきて、普通の日常的な動きで筋疲労を起こしやすくなります。筋疲労が続くと疲労物質が溜まって休んだ時に痛みが出ます。初めのうちは病院などに行かないのですが、そのうちに我慢しきれなくなり、病院に行くと消炎鎮痛剤、いわゆる「痛み止め」を処方されます。それを服用すると症状が治まります。もちろん、短期間の薬の服用でそのまま腰痛が完治する人も何十人かに1人はいるでしょう。しかし、ほとんどは、症状が軽減しても完治することはなく、薬を使用しながら腰痛自体は少しずつ悪くなっていくという経過をたどります。

筋疲労を起こしたあとで痛みが出るときには、実は患部では血流が回復して疲労物質を取り除こうという反応が起こっています。例えば、若い人でもやり慣れていない重労働をすると翌日、翌々日に筋肉痛、あるいは腰痛、膝痛などが出ます。若い人でも筋力が耐えられないような運動をすると疲労物質が溜まるのですが、疲労物質がたまるということは、その場所では相対的には血流障害が起こっているということになります。そして、安静にしたときに少しずつ血流が回復して痛みます。

痛みを取り除いてはならない理由

血流回復している最中は局所的に血管拡張物質であるプロスタグランジンが産生され血流回復を促します。しかし、プロスタグランジンは同時に発熱物質であり、痛みを起こす物質でもあるので、血流回復を積極的に行っている場所では、痛みを伴います。

このように正しい病態の把握ができると、本来痛みというのは疲労した筋肉を助けるための反応の1つだと分かります。組織障害が起きている場所の治癒反応として、プロスタグランジンの助けを借りながら、そういうところに血流がおしかけていって、そして、プロスタグランジンの作用である痛みをを出しながら治るわけです。結局、痛みというのは、筋肉や関節組織を修復するために起こっている反応なので、本当は積極的に進めてあげるべきなのです。

血流障害を目的とする消炎鎮痛剤

一方、消炎鎮痛剤、つまり‘痛み止め’の作用はどんなものでしょうか?
痛み止めは血管を開く物質であるプロスタグランジンの産生を阻害する薬剤ですから、血管を閉じるように働きかけます。押しかける血流、押しかける痛み物質が止められるわけですから、痛み自体は一時的に止まります。しかし、血流を止めているわけですから、同時に、組織修復自体も止めてしまいます。痛み止めは湿布薬にも使われていることでもわかるように、血流を止めるから良く冷えます。痛み物質の産出を抑えた上に冷やしてしまえば、痛みを感じなくなりますが、同時に治癒反応を止めてしまっているわけですから、結局、疲労の回復も、組織の修復も起こりません。根本的に治癒を止めることになってしまいます。これが‘痛み止め’と言われる薬の真相なのです。

痛み止めは鍼治療の効果を打ち消す

鍼治療の局所的な効果を単純に述べると、「鍼を刺した場所に血を集め、組織修復させる」というものです。生体反応が良い人に刺鍼すると、刺鍼部位の周りがほんのり赤くなる人がいます。いわゆる「フレアー現象」といわれる鍼治療で良く見られる現象です。これは、つまり刺鍼により血管拡張物質であるプロスタグランジンの産生を促し、組織修復を促進させている証拠でもあります。しかし、痛み止めを飲んだり、湿布を張ったりすると、せっかくプロスタグランジンの産生を鍼で促進しようとしているのにもかかわらず、それを打ち消してしまいます。

もちろん、打撲や怪我などの急性の炎症の場合には、激しく起こりすぎる炎症を止めるために消炎鎮痛剤を使い、場合によってはアイシングをしてもかまいません。痛みのために体力を奪われては元も子もないからです。しかし、血流障害を起こさせる行為は、治癒反応を遅らせるわけですから、急性期に限られた時間だけ、消炎鎮痛剤を使うという心掛けが必要です